スコーピオンズ 「暴虐の蠍団/Taken By Force」


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78年発表の5thアルバム、前作『狂熱の蠍団』と並んで、ウリ・ジョン・ロート在籍時の最高傑作と評価されている。



曲目

1. スティームロック・フィーヴァー
2. 空を燃やせ
3. 自由への叫び
4. 炎のロック・スター
5. カロンの渡し守
6. コア・ライト
7. 暴虐のハード・ロッカー
8. 愛のために生きて
9. サスペンダー・ラヴ
10. 暗黒の極限


スコーピオンズというより、ウリ・ジョン・ロートを紹介したくて本作を推す次第です。
ウリと言えばその風貌や独特のオーラから、日本では「仙人」と呼ばれる天才にして奇才ギタリストです。
日本でもかなりの支持を得ていますね。
敬愛するジミ・ヘンドリックスの影響でストラトキャスターを愛用し、クラシカルなアプローチを行うあたりリッチー・ブラックモアとも共通したルーツを持っていますが、彼の作品や映像を見聞きする限りイギリスとドイツという双方のお里、それからキャリアの違いが如実に表れている気もします。

個人的に、リッチーの次に好きなギタリストがウリなのでずっと注目しているんですが、やはりスコーピオンズ時代のウリ(=ウルリッヒ・ロート)が好きです。
テクニック面ではリッチーを上回るかも知れませんね。
タイプの全く異なるルドルフ・シェンカーが刻むフライングVサウンドとの相乗効果で、実に叙情的なハードロックを形成しています。
エレクトリックサン以降はちょっと浮世離れしてしまったような印象(と言うより、やりたい放題)で、とっつき難いんじゃないですかね。
そういう意味でもスコーピオンズ時代が良かったなと。

ウリに関して特に凄いなと思うのは、正確無比なピッキングと独特で効果的なフレージングです。
中でも「カーロンの渡し舟/The Sails Of Charon」はウリの名演で昔から大好きな曲です。
ドイツならではの暗さというか、おどろおどろしさが非常に印象的ですしテーマ性というか、強烈なオリジナリティが感じられます。

本作はスコーピオンズ時代の名盤です。
オープニングの「スティームロックフィーヴァー」からしてドイツならではの暗さと重さがソリッドなリフの中に表現されていながら、サビでは一転、長調に転調してポップさを表現しています。
「空を燃やせ/We'll Burn The Sky」はライヴで物凄い破壊力を持っていますし、「暴虐のハードロッカー/He's A Woman,She's A Man」は無茶苦茶ハードにドライヴィングしています。
クラウス・マイネのヴォーカルも伸びやかでいいです。
最盛期と呼んで差し支えないでしょう。
そして極め付けが「カーロンの渡し舟/The Sails Of Charon」ですね。
イングヴェイもお気に入りのこのナンバー、間違いなくウリにしか出来ない曲作りです。
この頃の蠍団は本当に良質なハードロックを生産していたなと痛感します。
その集大成がライヴ「蠍団爆発/Tokyo Tapes」であり、これこそウリの代表作であると同時にハードロック界の至宝的ライヴだと思います。
個人的にはパープルの「Made In Japan」と双璧を成すと思っているんですがね。
その「Tokyo Tapes」直前の最後のウリ在籍スタジオ盤が本作となるわけです。
またオリジナルドーナッツ盤には収録されていなかったライヴ版「暗黒の極限/Polar Nights」が入っているあたりもマニアには嬉しい限り。この曲はウリの独壇場ですからね。

ゲイリー・ムーアがブルース世界に行き、御大リッチーは吟遊詩人の世界でのんびり暮らす中、ウリは洞窟に閉じこもって更なる悟りの境地を開こうとしているかに見えます。
何だか晩年の宮本武蔵のようです。
ここまで来たら、とことん好きなだけ悟って欲しいと思いますね。